7月に入り、源泉所得税の納付書とカレンダーを見比べながら「納期の特例だといつまでに納めるんだっけ」と確かめている経理担当者

源泉所得税の納期の特例|7月・1月の納付を間違えない手順

「うちは納期の特例だから、源泉所得税は半年に一度でいいはず……。でも、7月っていつまでだっけ。何を、いくら納めればいいんだろう?」 毎月ではないぶん、いざその時期が来ると手順を忘れていて、7月のカレンダーを前に手が止まる。給与から預かった所得税を、期限までにきちんと納める——大事な仕事だとわかっているからこそ、「これで合っているかな」と何度も確かめたくなりますよね。ひとりで経理を回していると、半年に一度しか来ない作業ほど、この不安は大きくなります。

でも、ここで迷うのはあなたが忘れっぽいからではありません。納期の特例は「半年分をまとめて納める」しくみで、年に2回しか出番がないぶん、手順が記憶に残りにくくて当たり前なのです。逆に言えば、2つの期限と、特例に入る報酬・入らない報酬の線引きさえ押さえれば、毎回落ち着いて同じ手順で片づけられます

この記事では、次の納付までにやることを、順番にそって一つずつ分解します。今日は制度を丸暗記する必要はありません。まずは「いつまでに・何を・いくら・どうやって」という道すじを、一緒に確認していきましょう。

結論:納期の特例(給与の支給人員が常時10人未満の会社が使える制度)では、源泉所得税の納付期限は年2回です。①1〜6月に預かった分 → その年の7月10日まで②7〜12月に預かった分 → 翌年1月20日まで。納めるのは主に給与から預かった所得税と、税理士・弁護士・司法書士など一定の士業へ支払った報酬から預かった所得税です。デザイナーやライターへの報酬などは特例の対象外で、原則どおり翌月10日までの毎月納付になります。期限が土日祝のときは翌開庁日。納める税額が0円でも、「0」と書いた計算書(納付書)の提出は必要です。

いま何が起きているか:納期の特例の全体像

細かい手順に入る前に、この制度が「何をまとめているのか」をざっくり見ておきましょう。ここが頭に入ると、7月と1月に何をすればいいかが見えてきます。

1〜6月に預かった源泉所得税を7月10日までに、7〜12月分を翌1月20日までにまとめて納める納期の特例の流れを示した図
半年分の預かりを1枚の計算書にまとめ、7月10日と翌1月20日の年2回で納める

ポイントは、「いつ支払ったか(=いつ預かったか)」で、どちらの期限に入るかが決まること。6月に支払った給与から預かった分は7月10日、7月に支払った分は翌1月20日、という分け方です。まずはこの二段構えだけ、頭に置いておけば大丈夫です。

ステップ1:自社が「納期の特例」を使えているか確認する

まず、そもそも自社が特例の対象かを確かめます。ここがずれていると、納付のタイミングそのものが変わってしまうからです。

  1. 申請書を出して承認を受けているかを確認する。「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出し、承認された会社だけが特例を使えます(申請した月の翌月末までに却下の通知がなければ、承認されたものとして扱われます)。
  2. 給与の支給人員が常時10人未満かを確認する。10人以上になった場合は、特例の要件を満たさなくなったことを税務署に届け出て、原則の毎月納付に戻ります。
  3. 前回どちらの計算書で納めたかを確認する。過去の控え(納付書の控え)を見れば、自社が納特で運用しているかは一目で分かります。

もし「申請したか記憶があいまい」という場合も、責める必要はまったくありません。過去の納付書の控えや、顧問税理士とのやりとりを確認すれば、たいていはっきりします。分からなければ、所轄の税務署に「うちは納期の特例で合っていますか」と一度聞いてみるのがいちばん確実で安心です。

ステップ2:どの支払いが特例に入るか・入らないかを分ける

ここが、納期の特例でいちばん間違えやすいところです。「うちは納特だから、全部まとめて半年に一度」ではありません。特例でまとめられる範囲は決まっています。

給与と一定の士業報酬は納期の特例の対象、デザイナー・ライターなどへの報酬は対象外で毎月納付になることを左右に分けて示した図
特例でまとめられるのは給与と一部の士業報酬。それ以外の報酬は毎月10日納付のまま

特例でまとめて納められるもの(半年に一度でOK)

特例の対象外(原則どおり、支払った月の翌月10日までに毎月納付)

つまり、税理士報酬から預かった所得税は半年分まとめてよいけれど、フリーランスのデザイナーへ払った報酬から預かった所得税は、その月の翌月10日までに納める、という分かれ方です。ここを取り違えると「対象外の分を半年ためてしまい、毎月分が期限遅れになる」ということが起こりがちなので、支払いの相手ごとに「これは特例に入る?入らない?」を一度仕分けしておくと安心です。迷う報酬があれば、その報酬に源泉徴収が必要かどうかも含めて、顧問税理士や税務署に確認しておきましょう。

ステップ3:納める金額を集計する(半年分を1枚にまとめる)

対象を分けられたら、次は金額の集計です。難しい計算ではなく、「半年分の預かり額を足し合わせる」作業です。

  1. 対象期間(1〜6月、または7〜12月)に支払った給与・賞与ごとに、預かった源泉所得税を書き出す。
  2. 同じ期間の税理士など士業報酬から預かった源泉所得税を書き出す。
  3. それぞれを合計する。給与ソフト・会計ソフトを使っていれば、期間を指定すれば合計を出せます。
  4. 年末調整をした期(7〜12月分=1月納付)では、年末調整による過不足の精算が反映されます。還付が多い年は、納付額がぐっと減ったり0になったりすることもあります。

ここで大切なのは、集計した数字の「元」をたどれるようにしておくことです。給与台帳や源泉徴収簿と突き合わせて、「この合計額はここから来ている」と説明できる状態にしておくと、後から見直すときも、顧問税理士に確認してもらうときもスムーズです。1円合わないときは、無理に暗算で押し切らず、月ごとに分けて突き合わせると原因が見つかりやすくなります。

ステップ4:納付書に記入して、期限までに納める

金額が固まったら、いよいよ納付です。使う納付書と、納め方を確認しましょう。

そして何より大事なのが期限です。1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌1月20日。期限が土日祝にあたる年は、その次の開庁日が期限になります。たとえば2026年の7月10日は金曜日なので、この回はそのまま7月10日が期限です。

期限を過ぎると、原則として不納付加算税や延滞税がかかることがあります。ただ、これは読者を脅すための話ではありません。期限内にきちんと納めれば、何も起こりません。 もし資金繰りや事情で間に合いそうにないときは、抱え込まず、早めに所轄の税務署へ相談してみてください。早めの一報が、いちばん自分を守ってくれます。

影響:ここを押さえると、半年後の自分がラクになる

納期の特例は、うまく回せば毎月の事務がぐっと軽くなる、ひとり経理の味方になる制度です。だからこそ、次の点を押さえておくと、半年後の自分が助かります。

逆に、ここを曖昧にしたまま進むと、「対象外の報酬を半年ためてしまった」「0円だから出さなくていいと思っていた」といった、あとで直すのが手間なズレが起きやすくなります。今日のうちに一度だけ整理しておけば、次からはぐっとラクになります。

チェックリスト:次の納付までに確認したいこと

【毎回・納付のたびに】

【期限まわり】

【年に一度・年末調整の期だけ】

明日やること(まず1つだけ)

全部を一度に完璧にしようとすると、それだけで気が重くなります。 明日やることは、「対象期間に払った報酬の相手を書き出して、『特例に入る(給与・士業)』と『入らない(その他報酬)』の2つに仕分けしてみる」だけで十分です。

この仕分けが1枚できていれば、金額の集計も納付書の記入も、迷わず進められます。給与だけの会社なら、この仕分けはすぐ終わります。仕分けができたら、次に2つの期限をカレンダーに登録しておきましょう。それだけで、「半年に一度のうっかり」はほとんど防げます。

最後に

源泉所得税の納期の特例は、年に2回しか出番がないぶん、毎回「これで合っているかな」と確かめながら進める、静かで気をつかう仕事です。従業員から預かった大切なお金を、期限までにきちんと納める——それをひとりで背負いながら回しているのは、本当に大変なことだと思います。

源泉所得税の納付を期限内に終え、納付書の控えとカレンダーを見て落ち着いた表情のひとり経理の担当者

でも、これは「毎月追いかけ続ける試験」ではありません。2つの期限を知って、対象を仕分けして、半年分をまとめて納める。その流れさえ一度たどれば、次からはもう怖くありません。 今日、次の納付までの道すじがひとつ頭に入ったなら、それはもう「思い出せなくて止まる作業」が「落ち着いて進められる作業」に変わり始めた証拠です。完璧でなくて大丈夫。今日整理できたところまでで、十分前に進んでいます。

本記事は一般的な実務情報です。源泉所得税の取扱いや対象範囲、納付方法は、個別の事情や最新の通達によって異なります。最終的な判断は、国税庁・所轄税務署の情報や、顧問税理士にご確認ください。

給与から何をどの順で引くかの全体像は、給与計算の基本|総支給から手取りまでの流れもあわせてどうぞ。毎月の経理の段取り全体を整えたいときは、ひとり経理の月次決算チェックリストも役に立ちます。ほかの実務の手順も、記事一覧から少しずつ一緒に整理していきましょう。

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