
退職時の手続き|社会保険の喪失・離職票・源泉徴収票を期限順に
朝いちばんに、封筒を渡される。
「お世話になりました。今月末で退職させていただきます」
受け取って、席に戻って、封筒を机に置く。頭の中に浮かぶのは、寂しさよりも先に「……で、私は何をすればいいんだっけ」でした。
年金事務所。ハローワーク。市役所。源泉徴収票。保険証。返してもらうもの。渡すもの。どれも聞いたことはあるのに、どれが先で、いつまでなのかが、すぐには出てこない。前に退職者が出たのは2年前で、そのときのメモも見当たらない。
ひとりで経理を回していると、この「数年に一度しか来ない手続き」がいちばん重く感じます。毎月やっていることなら体が覚えているのに、退職手続きだけは毎回ゼロから思い出すことになるからです。
でも大丈夫です。退職の手続きは、覚えることが多いように見えて、期限が4つ並んでいるだけでした。順番に上から潰していけば、抜けません。今日はその4つの並びを、一緒に頭の中に置いていきましょう。
結論:退職日を起点に、期限が近い順で動けば大丈夫です。①社会保険の資格喪失届=退職日の翌日から5日以内に年金事務所(または健康保険組合)へ。②雇用保険の資格喪失届(+離職票が要るなら離職証明書)=退職日の翌日から10日以内にハローワークへ。③住民税の給与所得者異動届出書=退職した月の翌月10日までに市区町村へ。④源泉徴収票=退職後1か月以内に本人へ交付。この4つ以外は、社内の返却物・経費精算・最後の給与計算です。いちばん間違えやすいのは④ではなく、最後の給与から引く社会保険料——ここだけ後半でじっくり見ます。
覚えるのは「4つの期限」だけ

退職手続きが重く感じるのは、やることが多いからではなく、担当する役所がバラバラだからです。年金事務所、ハローワーク、市区町村、そして自社。全部あわせると10個くらいの作業に見えます。
でも、期限で並べ替えると、こうなります。
| いつまで | 何を | どこへ |
|---|---|---|
| 退職日の翌日から5日以内 | 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届 | 年金事務所(健康保険組合に入っていれば組合にも) |
| 退職日の翌日から10日以内 | 雇用保険 被保険者資格喪失届(+離職証明書) | ハローワーク |
| 退職した月の翌月10日まで | 給与支払報告に係る給与所得者異動届出書 | 従業員が住む市区町村 |
| 退職後1か月以内 | 給与所得の源泉徴収票 | 本人へ交付 |
たとえば7月31日に退職する人なら、8月5日・8月10日・8月10日・8月31日。カレンダーに4つ印をつけるだけです。ここまで来れば、もう半分終わったようなものです。
以下、ひとつずつ見ていきます。全部を今日読み切らなくても大丈夫。着手する順に読めば十分です。
① 社会保険:退職日の翌日から5日以内
いちばん期限が短いのがここです。だから、いちばん先に手をつけます。
提出するのは「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」。提出先は、日本年金機構(事務センターまたは管轄の年金事務所)です。健康保険組合に加入している会社は、組合にも届け出ます。電子申請(e-Gov)でも紙でも構いません。
つまずきやすいのは「資格喪失日」
この届に書く資格喪失日は、退職日ではなく、退職日の翌日です。
- 7月31日に退職 → 資格喪失日は8月1日
- 7月30日に退職 → 資格喪失日は7月31日
「最終出社日を書けばいいのかな」と迷いますが、書くのは退職日(雇用契約が終わる日)の翌日です。有給消化で最終出社日が早い場合も、基準になるのは退職日のほうです。
そして、この1日のズレが、後半で扱う「最後の給与の保険料」に効いてきます。資格喪失日は、退職手続き全体でいちばん大事な1行だと思っておいてください。
返してもらうもの、返さなくていいもの
以前は「保険証を回収して届出に添付」が定番でした。ここは、いま変わっています。
健康保険証(紙・カード型の被保険者証)は新規発行が終了し、マイナンバーカードを保険証として使う形(いわゆるマイナ保険証)へ移行しました。すでに交付済みの従来の保険証にも経過措置の期限が設けられ、現在は有効期限を過ぎています。そのため、退職時の実務はこう整理できます。
- 資格確認書が交付されている人(マイナ保険証を使っていない人)→ 返してもらいます。扶養に入っているご家族の分も忘れずに。
- マイナ保険証だけで受診している人 → 返してもらう現物はありません。資格喪失の届出をすれば、健康保険を使える状態は自動的に終わります。
- 「資格情報のお知らせ」(自分の資格内容を記した紙)→ 保険証そのものではないので、返却は不要です。
数年前の手順書を見ながら「保険証が返ってこない」と探すと、そこで止まってしまいます。返却物の有無は人によって違う、と知っておくだけで、余計な待ち時間が消えます。返却物の扱いや届出への添付方法は、加入している健保(協会けんぽ/健康保険組合)の案内が最終的な基準になるので、初回だけ確認しておくと以降は迷いません。
本人には「次の健康保険」を案内する
会社の手続きではありませんが、退職する本人がいちばん不安なのがここです。ひとこと添えられると、ずいぶん違います。
退職後の健康保険は、大きく3つです。任意継続(それまでの健康保険を最長2年続ける。原則、退職日の翌日から20日以内に手続き)、国民健康保険(市区町村。原則14日以内)、家族の被扶養者になる。どれが有利かは収入や家族構成によって変わるので、選ぶのは本人です。
経理としては、「20日以内・14日以内という短い期限がある」ことだけ伝える。これで十分です。そして、そのために本人が必要になるのが「健康保険資格喪失証明書」。頼まれてから慌てないよう、届出と一緒に用意しておくとスマートです。
② 雇用保険:翌日から10日以内、まず「離職票が要るか」を聞く
次はハローワークです。提出するのは「雇用保険 被保険者資格喪失届」で、期限は退職日の翌日から起算して10日以内。
ここで先に決めておきたいのが、離職票を出すかどうかです。
離職票が要るなら「離職証明書」を一緒に出す
離職票(正式には「雇用保険被保険者離職票」)は、退職者が失業給付を受けるときに使う書類です。これを出すには、資格喪失届と一緒に「雇用保険被保険者離職証明書」を提出します。
- 本人が「離職票は要りません」と言えば、離職証明書は原則不要です。
- ただし、退職時に59歳以上の人は、本人の希望にかかわらず離職証明書が必要です。ここは例外なので、生年月日を必ず確認してください。
- 「いま要らない」と言われても、後から必要になることがあります。転職先が急に変わることは珍しくありません。迷ったら出しておくほうが、あとで慌てません。
離職証明書には、本人のサインが要る
離職証明書には、離職前の賃金の記録と、離職理由を書きます。そして、離職理由の欄には「離職者本人の判断」を記入し、本人の署名をもらう欄があります。
つまり、本人が会社にいるうちにサインをもらっておくのがいちばん楽です。退職してから郵送でやり取りすると、それだけで1週間、下手をすると2週間かかります。
段取りのコツ:最終出社日までに、離職証明書の記入と本人署名を済ませてしまう。「離職票、要りますか?」と聞くタイミングは、退職届を受け取った日がベストです。
離職理由(自己都合か会社都合か)は、退職者にとって失業給付の受け取り方が変わる大事な項目です。事実と違う理由を書かないこと、本人の認識とズレたまま出さないこと。この2つだけ守れば大丈夫です。認識が食い違ったときは、ハローワークが双方の主張を確認したうえで判断してくれます。ひとりで抱え込まなくて構いません。
「失業保険はいつからもらえますか」と聞かれたら
聞かれる可能性が高い質問です。ざっくりだけ答えて、あとはハローワークにつなぐのが正解です。
会社都合の退職なら、待期期間(7日)のあと比較的早く受給が始まります。自己都合の退職は、以前は待期のあと2か月の給付制限がありましたが、現在は原則1か月に短縮されています。加えて、離職期間中などに一定の教育訓練を受けた場合は給付制限がかからない仕組みもあります。
ただ、金額も日数も本人の加入期間・年齢・離職理由で変わります。「詳しい条件と金額は、離職票を持ってハローワークで聞いてください」——ここまで案内できれば、経理としては十分すぎるくらいです。
なお、離職票は本人に直接送られてくるのではなく、ハローワークから会社に交付され、会社が本人へ渡します。手続きから交付まで10日前後かかるので、退職者には「2週間ほどで郵送します」と伝えておくと、問い合わせの電話が減ります。
③ 住民税:翌月10日までに異動届出書
3つ目は市区町村です。ここは「忘れやすさ」でいうと堂々の1位かもしれません。給与から天引きしている住民税(特別徴収)を、どう終わらせるかの手続きです。
提出するのは「給与支払報告に係る給与所得者異動届出書」。期限は、退職した月の翌月10日まで。提出先は、その従業員が1月1日時点で住んでいた市区町村です。
退職した月で扱いが変わる
住民税は、前年の所得に対する税額を、その年の6月から翌年5月までの12回に分けて天引きしています。だから「途中で辞めると、残りの分をどうするか」という話になります。
| 退職した月 | 残りの住民税の扱い |
|---|---|
| 6月〜12月 | 原則、普通徴収へ切替(本人あてに納付書が届き、自分で納める)。本人が希望すれば、最後の給与や退職金からまとめて引く一括徴収も可能 |
| 翌年1月〜4月 | 原則、5月分までを一括徴収(本人の希望にかかわらず、最後の給与・退職金から差し引く) |
| 5月 | その月の分を通常どおり引いて終了 |
1月〜4月の退職が「本人の希望によらず一括」なのは、法律でそう決まっているためです。ただし、最後の給与・退職金の額が住民税の残額に足りない場合は、普通徴収に切り替わります。差し引けないものは差し引けないので、そこは無理をしなくて大丈夫です。
年明けに退職者が出たときは、最後の給与の手取りがかなり減ることになります。本人が驚かないよう、「1月〜4月の退職だと住民税を5月分まで一度に引く決まりになっていて、今回は◯円になります」と事前に伝えておく。これだけで、退職後のトラブルがほぼ消えます。
転職先が決まっているなら、引き継げる
次の勤務先が決まっていて、そちらでも特別徴収を続ける場合は、同じ異動届出書に転職先の情報を書いて引き継ぎます。本人と転職先の担当者の同意が要るので、本人経由で確認してから進めましょう。
引き継げれば、退職者は納付書と付き合わずに済みます。手間はほとんど変わらないので、「次、決まっていますか?」と一度聞く価値はあります。
④ 源泉徴収票:退職後1か月以内に渡す
最後は源泉徴収票です。所得税法で、退職後1か月以内に本人へ交付することが決められています。
年末調整は「しない」
ここが、年の途中の退職でいちばん迷うところです。
年の途中で退職した人の年末調整は、原則として行いません。その年の1月から退職日までに支払った給与と、天引きした源泉所得税をそのまま集計して、源泉徴収票を作ります。年間の所得税を正しく精算するのは、
- 転職先がある人 → 転職先の年末調整(この源泉徴収票を提出して合算してもらう)
- 年内に再就職しない人 → 本人の確定申告
という流れになります。だから源泉徴収票は、退職者にとって次の職場で必ず求められる書類です。「1か月以内」は法律上の期限ですが、実務としては最後の給与を確定させたらすぐ作って渡すのがいちばん親切です。
作るときの注意はひとつだけ。「中途就職・退職」の欄に退職年月日を書き、年末調整をしていないので「年調未済」の状態で発行すること。控除の欄(生命保険料控除など)は、年末調整をしていないので空欄のままで構いません。本人が確定申告や転職先の年末調整で申告します。
会社が税務署・市区町村に出す分
本人に渡すのとは別に、会社から役所へ出す分の話もあります。
- 税務署への提出:中途退職者の源泉徴収票は、その年の給与等の支払金額が250万円を超える場合(法人の役員は50万円超)に提出が必要です。全員分を出す必要はありません。
- 市区町村への給与支払報告書:こちらは金額にかかわらず、退職者の分も翌年1月31日までに提出します(前述の異動届出書を出していれば、そちらで足りる自治体もあります。市区町村の案内に従ってください)。
このあたりの全体像は、法定調書と給与支払報告書にまとめています。年明けの提出時期に、退職者の分が抜けやすいので、そのときにまた見に来てください。
いちばん間違えやすいのは「最後の給与の社会保険料」
ここまでは、期限を守れば粛々と進む話でした。実は、ひとり経理がいちばん間違えやすいのはここです。
保険料は「資格喪失日が属する月の前月分」まで
健康保険・厚生年金の保険料は、資格喪失日(=退職日の翌日)が属する月の、前月分までかかります。文字で読むとややこしいので、表にします。
| 退職日 | 資格喪失日 | 保険料がかかるのは |
|---|---|---|
| 7月31日(月末) | 8月1日 | 7月分まで |
| 7月30日(月中) | 7月31日 | 6月分まで(7月分はかからない) |
たった1日違うだけで、7月分の保険料(会社負担分もあわせて)がかかるかどうかが変わります。月末退職と月末の前日退職で、こんなに扱いが違うのは、ここが「日」ではなく「月」単位のルールだからです。
「じゃあ30日で辞めてもらったほうが会社は得では」と思うかもしれませんが、その月の国民健康保険・国民年金は本人が自分で払うことになるので、本人の負担は増えます。退職日は本人と会社で決めるものです。経理としては、どちらになるかで保険料が変わることを、事前に共有しておくのが役割です。
最後の給与で「2か月分」引くことがある
多くの会社は、当月分の保険料を翌月の給与から差し引く(翌月控除)方式をとっています。この場合、退職月の給与が最後の1回だと、そこで前月分と当月分の2か月分を差し引くことになります。
たとえば、末日締め・当月25日払いの会社で、7月31日に退職する人。最後の給与は7月25日払いです。そこから引くのは、通常どおりの6月分に加えて、7月分まで。合計2か月分になります。
これは間違いではなく、正しい処理です。でも、何も言わずに引くと必ず問い合わせが来ます。
明細を渡すときのひとこと:「保険料は翌月に引く仕組みなので、最後のお給料では6月分と7月分の2か月分をお引きしています。金額が普段と違って見えますが、二重に引いているわけではありません」
このひとことが言えるだけで、退職後の気まずい電話が1本減ります。控除のタイミングの考え方そのものは、社会保険料・雇用保険料の控除と納付のタイミングで図にしているので、自社がどちらの方式か分からないときは先にそちらを見てください。
雇用保険料は「支払う賃金にその都度」
雇用保険料は、社会保険料と考え方が違います。支払う賃金の額に料率をかけて、支払うたびに引くものです。だから、月の途中で辞めても「◯月分」という区切りはありません。最後に支払う給与にも、いつもどおりかけて引く。それだけです。
同じ「保険料」なのに、片方は月単位で前月分、片方は支払いのたびに。この違いが、退職月の給与計算をややこしく見せている正体です。社会保険は月、雇用保険は支払い——この対比だけ覚えておけば、迷いません。
退職金を払うなら、先にもらう紙が1枚あります
退職金(退職手当)を支給する場合、忘れてはいけないものがひとつあります。
「退職所得の受給に関する申告書」を、支給前に本人に書いてもらうこと。
この申告書が出ているかどうかで、源泉徴収の計算がまったく変わります。
- 出ている場合:勤続年数に応じた退職所得控除を差し引いたうえで、正しい税額を計算して源泉徴収します。多くのケースでは、税額がゼロか、ごく少額になります。
- 出ていない場合:控除を使えず、支給額に一律20.42%をかけた所得税・復興特別所得税を源泉徴収することになります。本人は確定申告をしないと払いすぎた分が戻りません。
つまり、紙が1枚あるかないかで、退職者の手取りが大きく変わります。この申告書は会社が保管するもので、税務署に提出する必要は原則ありません(求められたら提出します)。支給日の前に受け取って、ファイルにとじる。それだけです。
なお、退職所得の源泉徴収票・特別徴収票は、法人の役員に支払った退職手当については、税務署・市区町村への提出が必要です。従業員分は本人交付のみで足ります。役員退職金を扱う機会は多くないので、そのときは顧問税理士に一度確認するのが確実です。
社内でやること(役所以外)
役所の4つが片づけば、あとは自社の中の話です。ここは会社ごとに違うので、自社の一覧を一度作ってしまうのが最短です。
返してもらうもの
- 資格確認書(交付されている場合。扶養家族の分も)
- 社員証・入館証・名刺・制服
- 会社の鍵、カードキー
- 貸与のパソコン・スマートフォン・タブレット
- 業務で使った書類・データ、社用車のキー、ETCカード
- 会社名義のクレジットカード(→ クレジットカードの未払金管理の残高もあわせて確認)
渡すもの
- 源泉徴収票(1か月以内)
- 雇用保険被保険者証(会社で預かっている場合)
- 年金手帳・基礎年金番号通知書(会社で預かっている場合)
- 離職票(ハローワークから届いたら)
- 健康保険資格喪失証明書(本人が国保・任意継続の手続きに使います)
締めておくこと
- 未精算の旅費交通費・立替経費の精算(最終出社日までに締切を伝える)
- 仮払金の精算(残高が残ったまま退職されないように)
- 未消化の有給休暇の取り扱い、最後の給与の支払日の確認
とくに仮払金と経費精算は、退職後に連絡がつきにくくなると、残高が試算表に残り続けます。「最終出社日の3営業日前が精算の締切です」と、早めに一度伝えてしまいましょう。
アカウントとメールは、担当が違っても経理が気づくポイントです。会計ソフト・銀行のインターネットバンキング・経費精算ツールの権限が残っていないか、退職日の前後で確認します。ひとり経理の会社ほど、権限の棚卸しは自分でやることになります。ここは忘れず。
退職手続きチェックリスト
退職届を受け取った日に、このまま上から見ていってください。
受け取った日(すぐ)
- 退職日(雇用契約の終了日)と最終出社日を確認したか
- 本人に「離職票は必要ですか」と聞いたか(59歳以上なら本人の希望にかかわらず必要)
- 次の勤務先が決まっているか(住民税の引き継ぎに使う)
- カレンダーに4つの期限(5日・10日・翌月10日・1か月)を書き込んだか
最終出社日まで
- 離職証明書を作成し、本人の署名をもらったか
- 経費精算・仮払金の精算の締切を本人に伝えたか
- 返却物の一覧を渡したか(資格確認書・貸与品・カード類)
- 退職金があるなら「退職所得の受給に関する申告書」を受け取ったか
退職日の翌日から
- 5日以内:健康保険・厚生年金の資格喪失届を提出したか(資格喪失日=退職日の翌日)
- 10日以内:雇用保険の資格喪失届(+離職証明書)を提出したか
- 翌月10日まで:住民税の給与所得者異動届出書を提出したか
- 1か月以内:源泉徴収票を交付したか(年調未済・退職年月日を記載)
最後の給与を計算するとき
- 社会保険料は「資格喪失日の属する月の前月分」までで合っているか
- 翌月控除の会社なら、最後の給与で2か月分になっていないか(なるなら本人に伝えたか)
- 雇用保険料は、支払う賃金にいつもどおりかけたか
- 1月〜4月の退職なら、住民税を5月分まで一括徴収したか
- 明細を渡すときに、金額が変わる理由をひとこと添えたか
あとで
- 離職票が届いたら本人へ送ったか
- 会計ソフト・銀行・各種ツールのアカウント権限を止めたか
- 翌年1月:給与支払報告書・源泉徴収票の提出対象に退職者を入れたか
明日やること(まず1つだけ)
全部をいっぺんに整えようとすると、それだけで気が重くなります。明日やることは、ひとつで十分です。
この記事のチェックリストを、自社のファイルに「退職手続きメモ」として1枚コピーしておく。
次に退職者が出るのは、半年後かもしれないし、2年後かもしれません。そのとき、いまの自分がいちばん助けてくれます。役所の名前と期限が並んだ紙が1枚あるだけで、「まず何から」で止まる時間がまるごと消えます。
余力があれば、そこに自社の返却物リスト(社員証・鍵・PC・カードの型番まで)を足しておいてください。会社ごとに違うのはここだけなので、一度書けば、あとはずっと使えます。年間の段取り全体を見直すときは、経理の年間スケジュールと一緒に置いておくと見つけやすくなります。
最後に
退職の手続きは、少し独特です。ミスをすると相手に迷惑がかかるのに、こちらは数年に一度しかやらない。しかも、送り出す気持ちの整理をしながら、期限のある書類を淡々と処理しなければならない。

それでも、覚えることは思ったより少なかったはずです。5日、10日、翌月10日、1か月。この4つの数字を上から潰していけば、抜けません。あとは、最後の給与で保険料が変わる理由をひとこと添えるだけ。
退職者にとって、最後に受け取る書類と明細は、その会社で働いた日々の締めくくりです。それを、期限どおりに、説明つきで渡してもらえること。それは、その人が最後に受け取る「ちゃんとしてもらえた」という感覚でもあります。
数年に一度の手続きを、今日ひとつ調べたあなたは、もうその準備ができています。細かい数字は覚えなくて大丈夫。困ったらまた、この4つの並びを見に来てください。ここで一緒に確かめられます。
本記事は一般的な実務情報です。社会保険・雇用保険の届出様式や期限、健康保険証(資格確認書)の取扱い、住民税の徴収方法、退職所得の源泉徴収の計算は、制度改正や個別の事情によって変わります。最終的な判断は、日本年金機構・厚生労働省(ハローワーク)・国税庁・お住まいの市区町村の最新の案内や、顧問税理士・社会保険労務士にご確認ください。
よければ、こちらも
- 最後の給与で保険料が2か月分になる理由は、社会保険料・雇用保険料の控除と納付のタイミングで図にしています。
- 給与から何をどの順で引くかの全体像は、給与計算の基本|総支給から手取りまでの流れからどうぞ。
- 年明けに退職者の分を出し忘れないために、法定調書と給与支払報告書|1月にまとめて出す書類もあわせて。ほかの実務の手順も、記事一覧から少しずつ一緒に整理していきましょう。