
経理の年間スケジュール|1枚にまとめて先回りする作り方
「今月、何か忘れていないかな」。
ひとりで経理を回していると、この感覚が毎月そっと顔を出しますよね。毎月の記帳や給与計算は体が覚えていても、年に1回や2回しか来ない仕事は、そもそも「来ること」を思い出せないと手をつけられません。前の担当者から引き継いだメモを頼りに、その月が来てから慌てて調べる——そんな進め方になっている方も多いと思います。
これは、記憶力の問題ではありません。年に1回の仕事を記憶で管理するのが、そもそも無理な設計なだけです。ひとり経理は相談相手も少なく、「そういえば来月あれがあるよ」と教えてくれる先輩もいない。だからこそ、頭の外に置いておく紙が要ります。
この記事では、経理の1年を3つの層に分けて、自社の決算月を軸に「1枚の年間スケジュール」へ落とすところまでを一緒にやります。全部を今日作らなくて大丈夫です。まずは骨組みだけ、一緒に置いていきましょう。
結論:経理の年間スケジュールは、①毎月くり返す仕事、②年2回など決まった月に来る仕事、③年1回だけの仕事の3層に分けて書くと、迷わず1枚に収まります。日付は「自社の決算月」と「給与の締め日・支給日」を軸に置くのがコツです。作ったら、期限の3〜5日前にカレンダーの通知を仕込んで完成。制度や期限は改正されることがあるので、年度の初めに顧問税理士や所轄の窓口で最新の内容を確認しながら更新していきましょう。
まず、経理の1年を3つの層に分ける

いきなり12か月分のカレンダーを埋めようとすると、途中で手が止まります。先に、仕事を来る頻度で3つに分けてしまいましょう。
- 毎月:記帳・月次の締め、給与計算、源泉所得税の納付、社会保険料の納付、請求と支払
- 年2回など:源泉所得税の納期の特例による納付、賞与、住民税の納期の特例による納付、中間申告
- 年1回:決算・申告、年末調整、法定調書と給与支払報告書、償却資産税の申告、労働保険の年度更新、算定基礎届
このうち、いちばん抜けやすいのは真ん中と右の層です。毎月やることは自然と体に入りますが、年1〜2回の仕事は「来る日」を紙に書いておかないと、思い出すきっかけがありません。年間スケジュールを作る目的は、実はこの2層のためだと思ってもらって大丈夫です。
毎月くり返す仕事を先に固定する
まず、毎月同じリズムで来る仕事を置きます。日付は会社ごとに違うので、自社の実際の日で書き換えてください。
- 前月分の記帳と月次の締め:月初〜10日ごろまでを目安に。
- 給与計算:締め日から支給日までの間。自社の締め日・支給日をそのまま書きます。
- 源泉所得税の納付:原則は、給与などを支払った月の翌月10日まで。
- 社会保険料の納付:前月分の保険料を、原則その月末までに納付します(口座振替の場合も引き落とし日は月末が基本)。
- 請求書の発行と入金確認、支払:自社の締め日・支払日を書きます。
ここは既に回っている部分なので、書き出すだけで済むはずです。「毎月やっていることを紙にする」ところは、経理の属人化を防ぐ|月次ルーティンをテンプレ化する第一歩やひとり経理の月次決算チェックリストもあわせて使ってみてください。
毎月の欄は、細かく書きすぎないのがコツです。年間スケジュールは「いつ来るか」の地図。手順そのものは別の月次チェックリストに置いて、役割を分けましょう。
年2回など、決まった月に来る仕事
次に、頻度は少ないけれど日付がほぼ決まっている仕事です。ここを書けた時点で、年間スケジュールの価値の半分は出ています。
- 源泉所得税の納期の特例:給与の支給人員が常時10人未満で、承認を受けている場合、納付は年2回になります。1〜6月分は7月10日まで、7〜12月分は翌年1月20日までです。→ 源泉所得税の納期の特例|年2回納付の手続きと注意点
- 住民税(特別徴収)の納期の特例:こちらも要件を満たして承認を受けている場合、年2回納付になります。納期は自治体の案内で確認しましょう。
- 賞与:夏と冬など、自社の支給月を書きます。賞与からも社会保険料と源泉税を控除し、賞与支払届の提出も必要です。→ 賞与の計算|社会保険料と源泉税の扱いを整理
- 中間申告・予定納税:前期の税額が一定以上のとき、法人税は事業年度開始から6か月を経過した日から2か月以内に中間申告があります。消費税は前年の税額に応じて年1回・3回・11回と回数が変わります。→ 中間申告と予定納税|通知が届いたときの進め方
中間申告は「税務署から通知が届いてから知る」ことが多く、資金繰りが急に苦しくなりやすいところです。前期の申告書を見れば、今期に中間申告が来るかどうかはだいたい先に分かります。分かった時点でスケジュールに置いておくと、支払の準備ができます。
年1回だけの仕事は「月」に貼り付ける
年1回の仕事は、日付が決まっているもの(暦で固定)と、決算月から数えるもの(会社ごとに変わる)に分かれます。ここを混ぜないのが大切です。
暦で決まっているもの
- 1月20日ごろ:源泉所得税の納期の特例(7〜12月分)の納付。
- 1月31日:法定調書合計表の提出、給与支払報告書を各市区町村へ提出、償却資産税(固定資産税の償却資産)の申告。この3つが同じ日に重なるので、1月は前倒しの準備が効きます。→ 法定調書と給与支払報告書|1月に出す書類の整理
- 3月〜4月ごろ:健康保険・介護保険の料率、雇用保険料率が年度単位で見直される時期。給与計算の設定を更新します。料率は毎年変わることがあるので、必ずその年の公表資料で確認しましょう。
- 5月〜6月:住民税の税額決定通知書が届き、6月支給の給与から新年度の税額に切り替えます。
- 6月1日〜7月10日:労働保険の年度更新(申告・納付)。→ 労働保険の年度更新|6月からの手続きの流れ
- 7月1日〜7月10日:算定基礎届(社会保険の定時決定)の提出。→ 算定基礎届の書き方|定時決定の流れをつかむ
- 9月〜10月ごろ:算定基礎届の結果(定時決定)が9月分の保険料から反映されます。控除するタイミングは会社のルールによるので、給与ソフトの設定と合わせて確認します。あわせて、10月ごろは最低賃金の改定時期でもあります。→ 社会保険料の控除タイミング|当月控除と翌月控除の違い
- 11月〜12月:年末調整。書類の配布・回収から計算までを、逆算して並べます。→ 年末調整のスケジュールとやること|担当者が迷わない全体像
決算月から数えるもの
- 決算日:実地棚卸、残高の確認。
- 決算日の翌日から2か月以内:法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・消費税の申告と納付(原則)。→ 法人税・消費税の申告期限と納付の段取り
- 決算日の3か月前ごろ:決算に向けた前倒しの準備を始める時期。→ 決算スケジュールの逆算|申告期限から決める3か月の段取り
たとえば3月決算の会社なら、5月末が申告・納付の山。6月〜7月に労働保険と算定基礎届が続き、11月ごろに中間申告、12月に年末調整、1月に法定調書という流れになります。12月決算の会社なら、2月末が申告の山で、1月の法定調書と重なるため年始がかなり忙しくなります。同じ「経理の1年」でも、決算月が違えば山の位置がまるで変わります。だから、他社のスケジュール表をそのまま使うのではなく、自社の決算月に置き換える作業が要るのです。
1枚にまとめる手順(30分ずつ、3回で完成)
一気に作ろうとしなくて大丈夫です。3回に分ければ、無理なく形になります。
1回目(30分):枠を作る
- A4横1枚に、12か月分の列を引きます。エクセルでもノートでも構いません。
- いちばん上の行に「決算日」と「申告・納付の期限」を書き込みます。ここが1年の背骨になります。
- 給与の締め日・支給日を毎月の欄に書きます。
2回目(30分):確定している仕事を埋める
- 前の章の「暦で決まっているもの」を、該当する月に書き写します。
- 前期の申告書の控えを開き、中間申告があるかどうかを確認して書き込みます。
- 源泉所得税・住民税の納期の特例を使っているかを確認し、使っていればその月に書きます(承認の有無は、税務署・自治体への届出控えで確認できます)。
3回目(30分):通知を仕込んで運用に乗せる
- 各期限の3〜5営業日前に、スマホやPCのカレンダーで通知が鳴るようにします。年間スケジュールは、見なければ効きません。
- 「準備を始める日」も別に置きます。年末調整なら、期限ではなく書類を配る日を通知にします。
- 完成したら印刷して、机の見える場所に貼ります。
運用のコツはひとつだけ。その仕事が終わったら、気づいたことをその場で赤ペンで書き足すことです。「今年は入金確認に3日かかった」「この書類は先方から届くのが遅い」——来年のあなたへの、いちばん役に立つ引き継ぎになります。
今日のチェックリスト
- 自社の決算日と、申告・納付の期限(原則、決算日の翌日から2か月以内)を書き出せたか
- 給与の締め日・支給日をスケジュールに書けたか
- 源泉所得税の納付が「毎月」か「年2回(納期の特例)」か確認できたか
- 住民税の特別徴収が「毎月」か「年2回」か確認できたか
- 6月〜7月の労働保険の年度更新・算定基礎届を、該当月に書けたか
- 1月31日に重なる3つ(法定調書合計表・給与支払報告書・償却資産税の申告)を書けたか
- 年末調整の「書類を配る日」を、期限とは別に置けたか
- 前期の申告書を見て、今期の中間申告の有無を確認できたか
- 各期限の3〜5営業日前に通知を仕込めたか
- 制度や料率が変わる時期(年度初め)に、見直す日を決めたか
全部に丸がつかなくて大丈夫です。今日は上から2つでも埋まれば、それがもう来年のあなたを助けます。
最後に

年に1回しか来ない仕事を覚えていられないのは、あなたの記憶力のせいではありません。ひとりで会社のお金の流れを全部引き受けているのだから、忘れて当然の量なのです。むしろ、「何か忘れていないかな」と毎月立ち止まれること自体が、とても誠実な仕事の仕方だと思います。
年間スケジュールは、その不安を紙に預けるための道具です。1枚できてしまえば、来月の心配は「思い出す仕事」から「見て確認する仕事」に変わります。そして来年のあなたは、今年のあなたが書き足したメモに何度も助けられます。
一度で完璧な表を作らなくて大丈夫です。今日、自社の決算日を1つ書き込めたなら、もう年間スケジュールは始まっています。ひとりで抱えてきた1年分の記憶を、少しずつ紙に渡していきましょう。
本記事は一般的な実務情報です。申告・納付の期限、届出の要否、料率や制度の内容は、会社の状況や事業年度、最新の法改正・自治体の運用によって異なります。実際のスケジュールと最終的な判断は、顧問税理士・所轄税務署・年金事務所・労働局・各自治体の案内でご確認ください。
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- 毎月の作業をテンプレにするなら、経理の属人化を防ぐ|月次ルーティンをテンプレ化する第一歩から。
- 決算前の3か月の並べ方は、決算スケジュールの逆算|申告期限から決める3か月の段取りで確認できます。
- 年末に向けた準備は、年末調整のスケジュールとやること|担当者が迷わない全体像や記事一覧から、少しずつ一緒に整えていきましょう。