従業員から回収した年末調整の申告書と控除証明書の束を、名簿と照らし合わせて一人ずつ確認しているひとり経理の担当者

年末調整で集める書類と従業員への案内文の作り方

「今年もそろそろ年末調整……従業員から書類を集めなきゃ」 カレンダーが秋に近づくと、給与をひとりで回している人の頭には、毎年この言葉がよぎりますよね。案内を出して、書類を配って、集めて、足りない人に催促して——やることは何となくわかるのに、「結局、誰に・何を出してもらえばいいんだっけ」が毎年あいまいで、そのたびに去年のメールをさかのぼる。その落ち着かなさは、とても身近だと思います。

でも、ここで迷うのは、あなたの準備不足のせいではありません。年末調整で集める書類は「全員が出すもの」と「その人だけが出すもの」が入り混じっていて、しかも様式は毎年少しずつ変わるからです。1年に1回しか回ってこないので、記憶が薄れているのは当たり前なのです。逆に言えば、「全員」と「該当者だけ」に一度仕分けしてしまえば、あとは名簿と突き合わせて集めるだけになります。

この記事では、集める書類を2つのグループに整理し、そのまま従業員に配れる案内文の型まで用意します。今日は控除の細かい計算まで覚える必要はありません。まずは「何を集めるか」と「どう案内するか」を、一緒にはっきりさせていきましょう。

結論:年末調整で集めるものは、①全員が出す2種類の申告書(扶養控除等申告書/基礎控除・配偶者控除等などが1枚になった申告書)と、②該当する人だけが出す書類(保険料控除申告書+各種控除証明書の原本、住宅ローン控除の申告書と残高証明書、中途入社者の前職の源泉徴収票)の2グループに分けられます。案内文は「提出物・提出期限・提出先・原本が必要なこと・なくした時の連絡先」の5点をやさしく書けば十分です。様式名や控除の要件は近年の税制改正で見直しが続いているので、実際の配布前に、その年分の最新様式を必ず国税庁で確認してください。

まず全体像:書類は「全員」と「該当者だけ」に分ける

細かい書類名に入る前に、仕分けの軸だけ先に押さえておきましょう。ここがぼんやりしていると、「全員に全部の紙を配る」ことになり、従業員も「自分には関係ない欄」に戸惑い、あなたの確認も増えてしまいます。

年末調整で集める書類は、大きく2つに分けられます。

この「全員/該当者」という分け方さえ持っておけば、案内文も「全員へのお願い」と「あてはまる人へのお願い」の2段構えでスッキリ書けます。まずはこの地図を頭に入れてから、それぞれの中身を見ていきましょう。

年末調整の書類を「全員が出すもの」と「該当者だけが出すもの」の2つのトレイに仕分けし、証明書は原本を添える流れを示した図
集める書類は「全員」と「該当者」に仕分けし、控除証明書は原本を添えてもらう

① 全員が出す書類:2種類の申告書

まずは、働いている人なら基本的に全員に書いてもらう申告書です。名前が長くて身構えますが、役割はシンプルです。

扶養控除等(異動)申告書

いわゆる「マル扶」と呼ばれる、年末調整の土台になる申告書です。本人の情報と、扶養している家族(配偶者・子・親など)を書いてもらう紙で、翌年分をこの時期にあわせて配ることが多いです。

基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除などの申告書

もう1枚、基礎控除申告書・配偶者控除等申告書・所得金額調整控除申告書などが1枚にまとまった様式があります。近年の税制改正で、この用紙にまとめられる申告書の種類や、控除の要件(対象になる家族の所得の上限など)は見直しが続いています。その年分の最新様式を国税庁からダウンロードして使うのが確実です。

この2種類は、事情にかかわらず全員に出してもらう「土台の書類」です。まずはここを全員から回収できれば、年末調整は半分進んだようなものです。

② 該当する人だけが出す書類

ここからは、あてはまる人だけが追加で出す書類です。全員に配る必要はなく、「こういう人は、この書類もお願いします」と案内すれば十分です。

保険料控除申告書+控除証明書の原本

生命保険や地震保険、国民年金などを自分で払っている人が出す申告書です。ポイントは、申告書だけでなく「控除証明書の原本」をセットで出してもらうこと。

証明書は原本が必要で、コピーや画像では受け付けられないのが原則です。案内文には「証明書は原本を、申告書に添えて(またはクリップで留めて)提出してください」と一言添えておくと、後からの往復が減ります。

住宅ローン控除の申告書+残高証明書(2年目以降)

住宅ローン控除を受けている人のうち、2年目以降の人は年末調整で手続きできます(初年度は本人の確定申告が必要)。

この2つは本人の手元にしか届かないので、対象者には早めに「探しておいてね」と声をかけておくと安心です。

中途入社者の前職の源泉徴収票

今年、途中で入社した人がいる場合は、前の会社が発行した源泉徴収票が必要です。年末調整は「その年に本人が受け取った給与全体」で計算するため、前職分がないと正しく精算できません。

従業員への案内文の作り方:5点を押さえるだけ

集めるものが整理できたら、あとは従業員への案内文です。難しく考えなくて大丈夫。次の5点さえ入っていれば、伝わる案内になります。

  1. 何を出してほしいか(全員のもの/あてはまる人だけのもの、を分けて書く)
  2. いつまでに出すか(社内の締切。役所の期限より前に、余裕をもって設定する)
  3. どこへ・どうやって出すか(提出先の人・場所、または提出方法)
  4. 証明書は原本が必要なこと(コピー不可の旨)
  5. なくした・わからない時の連絡先(あなた自身の連絡先を書いておく)

言葉づかいは、上から「提出すること」と迫るより、「お手数ですが、ご協力をお願いします」というやわらかいトーンのほうが、結果的に回収も早くなります。以下は、そのまま下地に使える案内文の型です。社名や日付を入れ替えて使ってください。

件名:【●月●日まで】年末調整の書類提出のお願い

お疲れさまです。経理の●●です。
今年の年末調整の時期になりました。下記の書類のご提出をお願いします。

■ 全員にお願いするもの(2種類)
・扶養控除等(異動)申告書
・基礎控除/配偶者控除等などの申告書
 ※ご家族に変更がない方も、「変更なし」で全員ご提出ください。

■ あてはまる方だけお願いするもの
・生命保険・地震保険・国民年金などを払っている方
  → 保険料控除申告書+控除証明書の「原本」
・住宅ローン控除を受けている方(2年目以降)
  → 住宅ローンの申告書+年末残高証明書
・今年、途中で入社された方
  → 前職の源泉徴収票

■ 提出期限:●月●日(●)まで
■ 提出先:●●(提出場所・方法)
■ お願い:控除証明書はコピーではなく「原本」をお願いします。

書き方で迷ったとき、証明書を見つけられないときは、
遠慮なく●●(内線・メール)までご連絡ください。一緒に確認します。

証明書の再発行には時間がかかることもあるので、社内の締切は、役所への提出期限より2〜3週間は前に設定しておくと、催促や差し戻しに余裕を持って対応できます。

明日やること(まず1つだけ)

まだ7月で、年末調整は先の話に感じるかもしれません。それでも、今できる一番かんたんな一手があります。

明日やることは、「去年の年末調整で従業員に配った案内文(メールや紙)を1つ探し出して開いてみる」だけで十分です。去年の案内を眺めると、「この書類の説明が足りなくて質問が多かった」「この人の回収が遅れた」といった詰まりどころが思い出せます。それがそのまま、今年の案内文をよくするメモになります。

全員/該当者の仕分けと、案内文の5点さえ持っておけば、秋になってから一から作り直す必要はありません。今日、集めるものの地図がひとつ見えたなら、それだけでもう今年の年末調整は少し軽くなっています。

チェックリスト:集める書類と案内の抜け漏れ確認

最後に

年末調整の書類集めは、従業員一人ひとりの1年分の税金を正しく精算するための、いわば土台づくりです。集めるものは多く、人によって出す書類も違い、しかも1年に1回しか回ってこない——それをひとりで案内して、回収して、突き合わせているのは、本当に大変なことだと思います。

従業員から集めた年末調整の書類が名簿どおりにそろい、落ち着いた表情でひと息ついているひとり経理の担当者

でも、これは「一度で全部を暗記する試験」ではありません。「全員」と「該当者」に仕分けして、案内文に5点を書く——その2つの型さえ持っておけば、あとはその年の様式に合わせて集めるだけです。細かい控除計算はソフトと最新資料に任せて、あなたは「誰に・何を・いつまでに」の地図を持つ人でいれば十分です。

今日、その地図がひとつ頭に入ったなら、それはもう今年の年末調整の準備が始まった証拠です。完璧でなくて大丈夫。今日ここまで読めたところで、十分前に進んでいます。

本記事は一般的な実務情報です。年末調整の様式・控除の要件・提出期限は、税制改正や個別の事情によって毎年見直されます。最終的な判断は、国税庁の「年末調整のしかた」など最新の一次情報や、顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。

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