従業員から受け取った扶養控除等申告書を広げ、家族欄を一つずつ指でたどって確認している経理担当者

扶養控除・配偶者控除の確認ポイント|申告書の見方

年末調整で従業員から申告書を受け取って、家族の欄を見たとき。 「この奥さん、パートしてるって言ってたけど……扶養に入れていいんだっけ?」 「大学生の息子さんは?」「別居のお母さんは?」

——そんなふうに、一人ひとりの家族を前に手が止まってしまうこと、ありますよね。控除の金額を間違えると税額が変わってしまうので、慎重になるほど、かえって「本当にこれで合ってる?」と不安になる。ひとりで給与を回していると、相談できる人もいなくて、余計に迷いやすい場所です。

でも、ここで迷うのは、あなたの勉強不足のせいではありません。扶養控除・配偶者控除は、「年齢」「続柄(その人との関係)」「その人自身の所得」という3つの条件が組み合わさって決まるため、一度に全部を頭に入れようとすると混乱しやすいのです。逆に言えば、この3点を順番に確認するだけで、ほとんどの判断はつきます。今日は、その見る順番を一緒に整理していきましょう。

結論:扶養控除・配偶者控除は、①その人は「配偶者」か「それ以外の親族」か → ②その人の合計所得金額は基準内か → ③(親族なら)年齢はいくつか、の順で確認します。ポイントは、判定に使うのは「収入」ではなく「所得(収入から給与所得控除などを引いた後の金額)」であること、そして16歳未満の子は所得税の扶養控除の対象外(ただし住民税のため申告書には記載が必要)であることです。なお令和7年分から、扶養親族・配偶者にできる所得の基準や控除のしくみが改正されています。控除額と金額基準は、その年分の最新のものを国税庁で必ず確認してください。

まず押さえる:控除の「入口」は2つに分かれる

家族の控除は、大きく2つの入口に分かれます。ここを最初に分けておくと、後がぐっと楽になります。

つまり、申告書の家族欄を見たら、まず「この人は配偶者?それ以外の親族?」で二手に分けるだけです。同じ「扶養に入っている家族」でも、配偶者だけは別の申告書・別の計算をする、と覚えておきましょう。

家族を「配偶者」と「配偶者以外の親族」に分け、それぞれ所得と年齢を確認する流れを左から右へ並べた図
まず「配偶者か、それ以外の親族か」で二手に分け、次にその人の所得、最後に年齢を確認する

いちばん迷う「収入」と「所得」の違い

家族の控除でつまずきやすい最大のポイントが、ここです。従業員は「妻の収入は年100万円くらい」と言ってきますが、判定に使うのは「収入」そのものではなく「所得」です。

パート・アルバイトのような給与の場合、次の式で所得を出します。

給与所得控除は「給与で働く人の必要経費のようなもの」で、収入に応じて自動的に決まる最低保障額があります。だから、収入がその保障額の範囲内なら、所得は「収入 − 保障額」で計算できます。ここで大事なのは、「◯◯万円の壁」と呼ばれる金額は、この給与所得控除を差し引いたうえでの所得基準から逆算されたものだということです。

そして注意したいのが、この所得の基準と給与所得控除の額が、令和7年分(2025年分)から見直されている点です。以前より扶養に入れる収入の上限が引き上げられ、さらに大学生年代(19歳以上23歳未満)の親族について新しい控除のしくみも設けられました。「去年までの◯万円の壁」の記憶のまま判定すると、基準を取り違えるおそれがあります。

そのため、この記事では具体的な金額を断定しません。その年分の正しい所得基準・控除額は、国税庁の「年末調整のしかた」や税制改正のパンフレットで必ず確認してください。ここで押さえてほしいのは、「収入で判断せず、所得に直してから基準と比べる」という手順そのものです。

ここは迷いやすいところ:従業員に確認するときは「収入(額面)はいくらですか」と聞き、こちら側で所得に直して判定します。本人に「所得はいくら?」と聞くと、収入と混同した数字が返ってくることが多いためです。

扶養控除は「年齢」で控除額が変わる

配偶者以外の親族(子・親など)が所得基準を満たしていたら、次は年齢を見ます。扶養控除は、年齢の区分によって控除額が変わるからです。区分の呼び名だけ、先に地図として持っておきましょう(金額はその年分の最新を国税庁で確認してください)。

年齢は「その年の12月31日時点」で判定します。誕生日の関係で区分が変わる人がいるので、生年月日は申告書の記載をそのまま確認しましょう。16歳未満の書き漏れは、住民税に影響するのに見落とされやすいので、ここだけは特に注意しておくと安心です。

配偶者は「控除」と「特別控除」の2段構え

配偶者だけは、専用のしくみです。ざっくり言うと、配偶者の所得が一定以下なら「配偶者控除」、それを少し超えても一定の範囲内なら「配偶者特別控除」という2段構えになっていて、所得が上がるほど控除額はゆるやかに減っていきます。いきなりゼロにならず、段階的に下がる作りです。

もうひとつ大事なのが、控除を受ける本人(従業員側)の所得にも上限があること。従業員自身の所得が高い場合、配偶者控除・配偶者特別控除は減額されたり、受けられなくなったりします。つまり「配偶者の所得」と「本人の所得」の両方を見る必要があります。

この判定は、「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という長い名前の申告書で行います。ここに本人と配偶者それぞれの所得の見積額を書き込み、対応する区分から控除額を出す流れです。従業員が空欄で出してくることも多いので、配偶者がいる人には「この申告書の配偶者欄まで書けていますか」と一声かけると、後戻りが減ります。

影響:ここを間違えると、年税額がずれる

扶養控除・配偶者控除は、所得税の年税額を左右する大きな要素です。人数や区分を1つ取り違えるだけで、還付・追徴の金額が変わってしまいます。だからこそ慎重になるわけですが、裏を返せば、「配偶者か親族か」「所得は基準内か」「年齢の区分は何か」を一人ずつ確認していけば、大きな取り違えはほぼ防げます

さらに、扶養に入れた家族の所得は、その家族自身の税や、社会保険の扱いにも関わってくることがあります。従業員から「これって扶養から外れちゃう?」と聞かれる場面も出てきますが、そこは税・社会保険それぞれの基準が別にあるため、断定せず「収入の見込みを教えてください、確認しますね」と受け止めれば十分です。ひとりで抱え込まず、判断に迷う人は顧問税理士や所轄税務署に確認する前提で進めましょう。

明日やること:申告書を「3点」で見返す

年末調整で集めた申告書を、次の3点だけで一度見返してみましょう。全部を一度に完璧にする必要はありません。

  1. 配偶者と親族を分けて数える……家族欄を「配偶者」と「それ以外」に色分けする感覚で。
  2. 各人の所得を、収入から直して基準と比べる……「収入いくら?」で聞き、こちらで所得に換算。基準額はその年分の最新を国税庁で確認。
  3. 年齢区分と16歳未満欄をチェック……生年月日を見て区分を確認し、16歳未満の記載漏れがないか。

確認チェックリスト

家族欄の確認を終えた申告書をそろえ、ひと区切りついて肩の力が抜けた表情の経理担当者
一人ずつ順番に確認できれば、扶養の判定はちゃんと前に進みます

扶養控除・配偶者控除は、一度で全部を暗記する必要はありません。「配偶者か、親族か」「所得は基準内か」「年齢はどの区分か」——この順番さえ手元にあれば、迷ったときにいつでも立ち戻れます。今日、その見る順番をひとつ持ち帰れたなら、次の申告書はきっと少し軽い気持ちで開けます。

金額の基準は年分で変わります。実際の計算に入る前に、必ずその年分の最新版を国税庁で確認し、判断に迷うケースは顧問税理士や所轄税務署に相談しながら進めていきましょう。

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