
貸借対照表の見方|資産・負債・純資産をざっくり読む
決算のときや月次のしめのあとに、会計ソフトから貸借対照表が出てきます。 左右にずらっと数字が並んでいて、左の合計と右の合計はぴったり同じ。でも、「この左右の表を、いったいどこから、どう読めばいいんだろう」と、そのまま閉じてしまったことはありませんか。
損益計算書なら「上から下へもうけを追う」と分かりやすいのですが、貸借対照表は左右に分かれているぶん、最初はとっつきにくく感じますよね。でも、読み方のコツはたったひとつ。左と右を、別々のものとして見る。これだけです。
この記事では、貸借対照表(B/S)を「左=会社の財産」「右=そのお金の出どころ」の2つに分けて、やさしくほどいていきます。今日は数字を細かく分析する必要はありません。まずは「左右に何が並んでいるのか」という全体の地図を、一緒につかんでいきましょう。
結論:貸借対照表は、左側(資産)=会社が持っている財産、右側(負債+純資産)=そのお金をどこから用意したか、の2つに分けて読みます。右側はさらに、負債=いつか返すお金(他人資本)と純資産=返さなくてよいお金(自己資本)に分かれます。左右の合計は必ず一致します(だから「バランスシート」)。ざっくり読むなら、①純資産がプラスか(債務超過でないか)、②手元資金と1年以内に返すお金のバランス、の2点が目安です。判断に迷う点は、顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。
そもそも貸借対照表とは——「ある時点の会社の財産のスナップ写真」
貸借対照表とは、決算日など「ある一時点」で、会社がどんな財産を持ち、その元手をどこから用意したかをまとめた表です。英語の Balance Sheet から「B/S(ビーエス)」とも呼ばれます。
前に整理した損益計算書が「一定期間のもうけの動き」を写した動画だとすれば、貸借対照表は「ある一瞬の会社の財産の状態」を写したスナップ写真です。決算日の時点で、会社の中に何がどれだけあるのか、その一枚に写し取られています。
貸借対照表のつくりは、思っているよりシンプルです。 まん中で左右に分かれていて、左側に「資産」、右側に「負債」と「純資産」が並んでいます。そして、左の合計と右の合計は必ずぴったり一致します。この「必ず一致する」という性質が、あとで読み方の助けにもなります。難しく考えず、まずは左右の2枚に分かれた表だと思ってください。
左と右は「同じお金を、2つの角度から見ている」

貸借対照表の左と右は、バラバラの表ではありません。同じお金を、2つのちがう角度から見ているだけです。
- 右側は、「会社がお金をどこから用意したか」(お金の集め方)
- 左側は、「その用意したお金が、今どんな形になっているか」(お金の使いみち・置き場所)
たとえば、銀行から300万円を借りて(右側の負債が300万円ふえる)、そのお金で200万円の機械を買い、100万円を預金で残した——とすると、左側は「機械200万円+預金100万円」になります。右で集めた300万円が、左では機械と預金という形に姿を変えているわけです。
だから、左の合計(財産の総額)と右の合計(お金の出どころの総額)は、必ず同じ金額になる。これが「バランスシート(釣り合う表)」と呼ばれる理由です。左右がそろっていないときは、どこかに記帳の抜けや誤りがある、というサインにもなります。
ここから、右側(お金の出どころ)→左側(財産)の順に、1つずつやさしく見ていきます。むずかしい言葉が出てきますが、どれも「返すお金か・返さないお金か」「すぐ使えるか・そうでないか」を表しているだけです。
右側:お金の「出どころ」は2種類——負債と純資産
まず右側から見ます。会社がお金を用意する方法は、大きく2つしかありません。借りてくるか(負債)、自分で用意するか(純資産)です。
負債——いつか返さなければならないお金(他人資本)
右側の上のほうに並ぶのが負債です。ひとことで言えば、いつか外に返さなければならないお金。他人から預かっている元手なので「他人資本」とも呼ばれます。
たとえば、こんなものが負債に入ります。
負債は、返す時期の近い・遠いで、さらに2つに分けて並びます。
- 流動負債:1年以内に支払う予定のもの(買掛金、短期借入金、未払金など)
- 固定負債:支払いが1年より先のもの(長期借入金など)
負債そのものは「悪いもの」ではありません。借入れで手元資金を厚くしたり、設備に投資したりするのは、会社を回すうえでふつうのことです。大事なのは、返す時期(流動か固定か)と、返せる見通しがあるかをつかんでおくこと。とくに、1年以内に返す流動負債に対して、すぐ使える手元のお金が足りているかは、あとで見るポイントになります。
純資産——返さなくてよい会社自身のお金(自己資本)
右側の下のほうに並ぶのが純資産です。負債とちがって、外に返さなくてよい、会社自身のお金。「自己資本」とも呼ばれます。
純資産の中身は、おもにこの2つです。
- 資本金:会社を作るときや増資のときに、出資者(社長など)が入れた元手
- 利益剰余金(繰越利益剰余金など):これまでの利益の積み重ねのうち、社内に残してきた分
ここがこの記事でいちばん大事なところです。 毎年の損益計算書で計算した当期純利益は、この純資産(利益剰余金)に積み上がっていきます。黒字の年は純資産がふえ、赤字の年は減る。つまり、貸借対照表の純資産は、会社が今日までに積み上げてきた体力そのものなのです。損益計算書(1年のもうけ)と貸借対照表(今の財産)は、この純資産のところでつながっています。
左側:財産は「すぐお金にできる順」に並んでいる

次に左側の資産です。右側で用意したお金が、今どんな形になっているか。左側には、その財産が「すぐお金にできる順(上から下へ)」に並んでいます。
- 流動資産(上のほう):1年以内に現金化しやすい財産
- 現金・預金、売掛金、受取手形、棚卸資産(在庫) など
- 固定資産(下のほう):長く使う、すぐには現金化しない財産
- 建物・機械・車両などの有形固定資産、ソフトウェアなどの無形固定資産、減価償却の対象になるもの など
なぜ「すぐお金にできる順」に並んでいるかというと、会社がいざというときにどれだけ手元のお金を作れるかを見やすくするためです。上のほうの流動資産が厚ければ、当面の支払いには対応しやすい。下のほうの固定資産は、事業を続けるために持っている財産で、すぐ売ってお金にするものではありません。
ここで、右側で見た「流動負債(1年以内に返すお金)」と、左側の「流動資産(1年以内にお金にできる財産)」を見くらべるのが、貸借対照表のざっくり読みのコツになります。次の章で、その見方を整理します。
ざっくり読む:まず見たい2つのポイント
5つも6つも指標を覚える必要はありません。 ひとり経理がまず押さえたいのは、次の2点だけで十分です。
ポイント1:純資産はプラスか(債務超過になっていないか)
いちばん先に見たいのは、右下の純資産がプラスになっているかです。
- 資産(左)よりも負債(右上)のほうが大きくなり、純資産がマイナスになっている状態を「債務超過」といいます。
- これは、持っている財産をすべてお金に換えても、返すべき負債を返しきれない、という状態を表します。
純資産がプラスなら、ひとまず会社は自分の元手を残せている、ということ。もし純資産がマイナス、あるいは前期より大きく減っているときは、早めに顧問税理士に共有して、原因と対応を一緒に確認しておくと安心です。数字を責める必要はありません。気づいて相談できることが、いちばん大事です。
ポイント2:1年以内のお金の出入りのバランス
もう1つは、「1年以内にお金にできる財産(流動資産)」が「1年以内に返すお金(流動負債)」をまかなえそうか、という手元のバランスです。
- 流動資産が流動負債を上回っていれば、当面の支払いには対応しやすい、と読めます。
- 逆に流動負債のほうが大きいときは、資金繰りに少し注意して見ておきたいサインです。
とはいえ、業種や取引条件によって適正なバランスは変わります。数字そのものよりも、前期(または前月)とくらべて、このバランスが悪くなっていないかを見るほうが、ひとり経理には役立ちます。これは試算表の見方で「先月とくらべる」のと同じ発想です。急に変わったところがあれば、その理由をメモしておきましょう。
貸借対照表チェックリスト
貸借対照表を出したら、左右に分けて確認するためのリストです。 コピーして、「○/要確認」を付けながら使ってください。会社に合わない項目は外して構いません。
まず全体を確認
- 左(資産)の合計と右(負債+純資産)の合計が一致しているか
- 純資産はプラスか(債務超過になっていないか)
- 純資産が前期より大きく減っていないか
右側(お金の出どころ)を確認
- 流動負債(1年以内に返すお金)に、支払見通しはあるか
- 借入金の残高が前期から大きく動いていないか
- 未払法人税等・預り金など、これから払うものが漏れなく載っているか
左側(財産)を確認
- 現金・預金の残高が、通帳や現金出納帳と合っているか
- 売掛金に、回収の止まっている古いものが混ざっていないか
- 在庫(棚卸資産)の金額は、実地棚卸の結果と合っているか
見くらべ
- 流動資産と流動負債のバランスが、前期より悪くなっていないか
- 説明できない増減の理由を、あとで確認できるようメモしたか
明日やること(まず1つだけ)
全部をいきなり理解しようとしなくて大丈夫です。 明日やることは、手元の貸借対照表を1枚出して、まん中に1本、左右を分ける線を引いてみるだけで十分です。
線の左が「会社の財産」、右が「そのお金の出どころ」。そして右をさらに上下に分けて、上が「返すお金(負債)」、下が「返さないお金(純資産)」。この3つに色を分けるだけで、ずらっと並んでいた数字が「意味のあるかたまり」に見えてきます。まずはこの左右・上下の地図が分かれば、貸借対照表を「読む」第一歩は、もう踏み出せています。
最後に
貸借対照表は、会社が今日まで積み重ねてきた財産の姿が、そのまま一枚に写った表です。 左右に数字が並ぶと最初は身構えてしまいますが、読み方は「左=財産、右=その出どころ」と分けるだけ。そして右下の純資産には、あなたが毎期こつこつ積み上げてきた利益が、ちゃんと残っています。

ひとりで会社の数字と向き合い、このページまでたどり着いた——それだけで、あなたはもう十分に前へ進んでいます。今日は左右の地図と、純資産がプラスかどうかが分かれば、それで合格です。細かい分析は、また明日、少しずつ一緒に進めていきましょう。
本記事は一般的な実務情報です。税務・会計の取扱いは個別の事情や最新の通達によって異なります。最終的な判断は、顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。