
マイナンバーの取得・保管|ひとり経理が守る4つの管理ルール
年末調整の書類を集めていると、従業員から預かった紙にマイナンバーが書いてある。ふと、「これ、いつもの書類と同じ棚に入れておいていいんだっけ?」と手が止まる。入社のときに番号を聞いたきり、どこに、どう保管したのか、はっきり思い出せない。誰かに聞きたくても、社内でこれを知っているのは自分だけ——ひとりで経理を回していると、こういう「なんとなく不安なまま」の仕事が、いくつも積み重なっていきますよね。
でも、ここで迷うのはあなたの管理がずさんだからではありません。マイナンバーのルールは、ふだんの書類管理と少しだけ違う「約束ごと」があるので、最初に一度整理しないとわかりにくいのが当たり前なのです。そして、その約束ごとは、思っているよりずっとシンプルです。
この記事では、マイナンバーの取得から保管・廃棄までを、「取る・しまう・使う・捨てる」の4つに分けて整理します。年末調整が本格的に始まる前のいまが、見直しにちょうどいいタイミングです。一緒に確認していきましょう。
結論:マイナンバー(個人番号)は、税と社会保険の手続きに必要なときだけ、利用目的を伝えて取得し、本人確認(番号確認+身元確認)をします。取得したら、扱える人と置き場所を決めてしまい、決められた手続き以外には使わず、必要がなくなり保存期間を過ぎたら速やかに廃棄・削除します。小さな会社(従業員100人以下の多くの事業者)には、ガイドラインで負担を軽くした「特例的な対応方法」も用意されています。完璧な仕組みより、まず「4つの約束を守れる形」を作ることから始めれば大丈夫です。
何が起きているか:マイナンバーは「預かりもの」として扱う
細かい手順に入る前に、マイナンバーが他の個人情報と何が違うのかを、ざっくり押さえておきましょう。
- 使える場面が法律で決まっている:会社がマイナンバーを使えるのは、源泉徴収票や支払調書の作成、健康保険・厚生年金・雇用保険の届出など、税と社会保障の手続きに限られます。社員番号の代わりにしたり、顧客管理に使ったりはできません。
- 集めすぎない・持ちすぎない:必要な手続きがあるときに取得し、必要がなくなったら手放す、という考え方です。「念のためにとっておく」は、マイナンバーでは基本的にしません。
- 会社は「預かっている」立場:番号はあくまで従業員本人のもの。会社は手続きのために一時的に預かっている、というイメージで考えると、ルールがすっと入ってきます。
このあと見ていく4つの約束ごとは、すべてこの「必要なときだけ、必要な範囲で、大切に預かる」という考え方から出てきています。
マイナンバー管理の4つのルール:取る・しまう・使う・捨てる

ここからは、4つの場面を順番に見ていきます。全部を一度に整えなくて大丈夫です。自社がいまどこまでできているかを、確かめるつもりで読んでみてください。
ルール1:取る——利用目的を伝え、本人確認をする
マイナンバーを従業員から受け取るときは、次の2つをセットで行います。
- 利用目的を伝える:「源泉徴収票の作成、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の届出のために使います」といった形で、何に使うかを伝えます。入社書類の案内文や、年末調整の案内文に一文入れておけば十分です。
- 本人確認をする:マイナンバーの本人確認は、「番号が正しいか(番号確認)」と「本人かどうか(身元確認)」の2つをそろえます。
- マイナンバーカードがあれば、1枚で両方の確認ができます。
- カードがない場合は、番号確認(番号が記載された住民票の写しなど)と、身元確認(運転免許証やパスポートなど)を組み合わせます。
なお、健康保険証はマイナ保険証への移行で新規発行が終わっているため、身元確認の書類としては、マイナンバーカードや運転免許証などで考えておくと迷いにくくなります。
扶養家族のマイナンバーについては、従業員が扶養控除等申告書に家族の番号を書いて提出する場合、家族の本人確認は従業員が行うという整理になっています。会社が家族一人ひとりのカードを確認する必要はありません。ただし、配偶者の国民年金第3号被保険者の届出など、扱いが異なる手続きもあるので、迷ったら年金事務所や社労士に確認しておくと安心です。
また、本人確認書類のコピーをとっておく義務はありません。コピーを残すなら、それもマイナンバーと同じように大切に管理する対象になります。「確認した日と方法をメモしておく」だけでも、記録としては十分役に立ちます。
ルール2:しまう——扱える人と置き場所を決める
受け取ったマイナンバーは、「誰が触れるか」と「どこに置くか」を決めてしまいます。
- 扱う人を決める:ひとり経理なら、基本は自分ひとり。加えて、自分が休んだときの代わりの人(社長など)を決めておくと安心です。
- 紙の置き場所:鍵のかかるキャビネットや引き出しにまとめます。年末調整の書類一式を、ほかの書類と同じ棚に出しっぱなしにしない、くらいのイメージで大丈夫です。
- データの置き場所:給与ソフトやクラウドの労務ソフトに入力しているなら、ログインできる人を絞る、パスワードを共有しない、といった基本を確認します。Excelで一覧を作っている場合は、ファイルにパスワードをかけ、共有フォルダに置きっぱなしにしないようにします。
小さな会社には、ガイドラインで「特例的な対応方法」が認められていて、取扱規程を細かく作り込まなくても、扱う人や手順をはっきりさせておけばよい、といった形で負担が軽くなっています。立派な規程集を作ろうとせず、「誰が・どこに・どうしまうか」をA4一枚にメモしておくところから始めれば十分です。
ルール3:使う——決まった手続きだけに使い、渡し方に気をつける
マイナンバーを使うのは、利用目的として伝えた手続きの中だけです。
- 使ってよい場面の例:源泉徴収票・給与支払報告書の作成、健康保険・厚生年金保険の資格取得届、雇用保険の手続き など
- 使わない場面の例:社員番号として使う、名簿に載せる、本人確認以外の目的でコピーを配る など
ここで気をつけたいのが、従業員本人に渡す源泉徴収票です。本人に交付する源泉徴収票には、マイナンバーを記載しません。税務署や市区町村に提出するものとは扱いが違うので、給与ソフトの出力設定を一度確認しておくと安心です。
また、給与計算や社会保険の手続きを社労士や税理士に委託している場合は、マイナンバーの受け渡し方法(メールに直接書かない、専用の共有ツールを使う など)を事前にすり合わせておきます。委託先がきちんと管理しているかを確認するのも、委託する側の役割のひとつです。
ルール4:捨てる——保存期間を過ぎたら、速やかに廃棄・削除する
マイナンバーは、必要な手続きがなくなり、法律で決まった保存期間が過ぎたら、できるだけ速やかに廃棄・削除します。
- 扶養控除等申告書は、提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間保存します。期間が過ぎたら、まとめて廃棄します。
- 退職した人のマイナンバーも、退職後の手続き(源泉徴収票の作成など)と書類の保存期間が終わったら、廃棄・削除の対象です。
- 廃棄の方法:紙はシュレッダーなど復元できない方法で。データは、給与ソフトの削除機能や、ファイルそのものの削除で消します。
- 記録を残す:「いつ・何を・誰が廃棄したか」を簡単にメモしておきます。小さな会社なら、廃棄したことを社長など責任ある立場の人が確認する、という形で十分です。
「捨てるタイミングがわからないから、全部とってある」という会社は少なくありません。年に一度、年末調整が終わった1〜2月ごろに「今年捨てるものはあるか」を見る日を決めておくと、自然に回り始めます。
具体例:社員5人の会社のひとり経理、Aさんの場合
社員5人の会社で経理を担当するAさん。入社時に集めたマイナンバーは、扶養控除等申告書と一緒に、ほかの給与書類と同じファイルに綴じていました。年末調整の準備を始めた10月、ふと不安になって、4つのルールに沿って見直してみました。
- 取る:入社書類の案内文に、利用目的の一文を追加した。今年の新入社員はマイナンバーカードで確認済み、確認した日をメモに残した。
- しまう:マイナンバーが載った書類だけを別のファイルに分け、鍵のかかる引き出しへ。給与ソフトのログインは自分と社長の2人だけにした。
- 使う:給与ソフトの設定を見て、本人交付用の源泉徴収票に番号が出ないことを確認した。
- 捨てる:3年前に退職した人の書類が残っていたので、保存期間を確かめて、過ぎたら廃棄する日をカレンダーに入れた。
かかった時間は、半日ほど。Aさんは「完璧ではないけれど、少なくとも『どこに何があるか分からない』不安はなくなった」と話していました。
影響:4つを決めておくと、毎年の年末調整がラクになる
4つの約束ごとを一度決めておくと、次のような変化があります。
- 年末調整で迷わない:マイナンバーの載った書類の行き先が決まっているので、集めたあとに悩む時間が減ります。
- 聞かれたときに答えられる:従業員から「番号、どう管理しているんですか?」と聞かれても、落ち着いて説明できます。
- 引き継ぎがしやすい:A4一枚のメモがあれば、自分が休むときや、いつか担当が変わるときも安心です。
逆に、ここを曖昧にしたままだと、書類が増えるたびに「これはどこに置くんだっけ」が積み重なっていきます。今日一度整理するだけで、来年以降の自分がぐっとラクになります。
明日やること(まず1つだけ)
明日やることは、「マイナンバーが載っている書類とデータが、いまどこにあるかを書き出してみる」だけで十分です。
紙なら「どのファイル・どの棚か」、データなら「どのソフト・どのフォルダか」。書き出してみると、「ここは鍵がかかっていないな」「この人の分はもう要らないかも」と、次にやることが自然に見えてきます。置き場所が分かれば、ルール2〜4はそこから一つずつ整えていけば大丈夫です。
チェックリスト:マイナンバー管理の見直し
【取る】
- 利用目的を、入社書類や年末調整の案内文で従業員に伝えている
- 本人確認(番号確認+身元確認)をして、確認した日と方法を記録している
- 扶養家族の番号は、扶養控除等申告書を通じて受け取る流れになっている
【しまう】
- マイナンバーを扱う人(自分+代わりの人)を決めている
- 紙の書類は、鍵のかかる場所にまとめている
- 給与ソフト・Excelなどのデータは、見られる人を絞っている
- 「誰が・どこに・どうしまうか」をメモにしている
【使う】
- 税と社会保険の手続き以外に使っていない
- 本人に渡す源泉徴収票に、マイナンバーが出ない設定になっている
- 社労士・税理士との受け渡し方法を決めている
【捨てる】
- 保存期間(扶養控除等申告書は7年など)を把握している
- 退職者の分を含め、廃棄する時期をカレンダーに入れている
- 廃棄した日・内容・確認者を記録している
最後に
マイナンバーの管理は、目立たないけれど、従業員一人ひとりの大切な情報を預かる仕事です。年末調整や入社手続きの合間に、それをひとりで気にかけ続けているのは、本当に大変で、そして大切なことだと思います。

取る・しまう・使う・捨てる。この4つの約束ごとが決まっていれば、マイナンバーはもう「よく分からなくて怖いもの」ではありません。今日、置き場所をひとつ確かめただけでも、十分な一歩です。完璧な仕組みは、少しずつ育てていけば大丈夫。一緒に、ひとつずつ整えていきましょう。
本記事は一般的な実務情報です。マイナンバーの取扱いや安全管理措置の考え方は、事業者の規模や業務の内容、最新のガイドラインによって異なります。最終的な判断は、個人情報保護委員会・国税庁などの一次情報や、顧問の社労士・税理士にご確認ください。
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