
訂正仕訳・赤伝の切り方|間違えた仕訳の直し方をやさしく整理
「あ……この仕訳、科目を間違えて入れてた。しかも先月分だ」 入力済みの仕訳のミスに、あとから気づく。会計ソフトを開いていて、ふと目に留まった一行。金額は合っているけれど科目が違う、あるいは借方と貸方が逆——。ひとりで経理を回していると、この「後から見つけた自分のミス」と向き合う場面は、本当に身近だと思います。
でも、ここで自分を責めなくて大丈夫です。仕訳は一日に何十件も入れるもの。科目の取り違え・金額の打ち間違い・貸借の逆転は、丁寧にやっていても自然に混ざり込むものです。だからこそ、会計には「間違えた仕訳をきれいに直すための型」がちゃんと用意されています。それが訂正仕訳と、その考え方をあらわす赤伝(赤字伝票)です。
この記事では、「間違いに気づいたらまず何を確認するか」「反対仕訳(逆仕訳)でどう消すか」「赤伝とは何で、いつ使うか」「実際にどう仕訳するか」「やってはいけない直し方」までを、順番にそって整理します。今日は全部を覚えなくて大丈夫。まずは「間違いを、証拠を残しながら正しく消す手順」を、一緒に地図にしていきましょう。
結論:入力済みの仕訳を間違えたときは、元の数字を黙って上書きしないのが基本です。①間違えた仕訳の内容を確認する→②その仕訳とまったく逆の仕訳(反対仕訳/逆仕訳)を入れて打ち消す→③正しい仕訳を入れ直す、の順で直します。この「逆仕訳で消す」考え方を紙の伝票で赤字(マイナス)で表したものが赤伝です。会計ソフトでは、多くの場合この反対仕訳と正しい仕訳の2本(または赤黒2枚)で直します。金額だけの誤りなら、差額分だけを足し引きする方法もあります。大事なのは、「いつ・どの仕訳を・なぜ直したか」を記録として残すこと。間違いを消した跡が見えるようにしておけば、あとから自分も税理士も、安心して帳簿をたどれます。
まず押さえる:訂正仕訳・赤伝って、そもそも何?
最初に、言葉の根っこだけ押さえておきましょう。ここが分かると、直し方がすっと頭に入ります。
訂正仕訳とは、すでに入力した仕訳の間違いを直すために、あとから入れる仕訳のことです。ポイントは、間違えた元の仕訳を「なかったこと」にして書き換えるのではなく、「間違えた」「だから直した」という2つの事実を、両方とも帳簿に残すという考え方です。
赤伝(赤字伝票)は、その「打ち消し」を紙の伝票時代に表していた方法です。間違えた金額を赤字(マイナス)で書いて元の計上を取り消し、正しい金額を黒字(プラス)で書き直す。だから「赤伝を切る」「赤黒(あかくろ)で直す」という言い方をします。会計ソフトが主流のいまは、赤い紙を使うことは減りましたが、「逆の仕訳で打ち消してから入れ直す」という考え方そのものは、そのまま生きています。
なぜ上書きではなく、わざわざ打ち消すのか。理由はシンプルで、あとから「何をどう直したか」がたどれるようにするためです。元の数字をこっそり書き換えてしまうと、間違いの跡が消えて、月次の数字が合わない原因を追えなくなったり、税務の場面で「記録が改ざんされている」と見られてしまうリスクがあります。訂正仕訳は、あなたの仕事の正しさを守るための「直した証拠」なのです。
直す前に:まず確認する3つの順番
間違いに気づいたら、いきなり打ち消しに行かず、次の順番で確認します。ここを飛ばすと「直したつもりが二重に直していた」となりがちなので、遠回りに見えて実はいちばんの近道です。

1. 間違えた元の仕訳を特定する
まず、どの仕訳が、どう間違っているのかを確認します。日付・伝票番号・金額をメモしておくと、あとで打ち消すときに取り違えません。よくある間違いは、①科目が違う(消耗品費にすべきを事務用品費に、など)②借方と貸方が逆③金額の打ち間違い④二重計上(同じ取引を2回入れた)の4パターンです。どれに当たるかを先に見分けると、直し方が決まります。
2. その仕訳を「まだ直せる時期か」を確認する
次に、その仕訳がいつのものかを見ます。同じ会計期間の中(月次を締める前など)なら、落ち着いて訂正仕訳を入れれば大丈夫です。一方、すでに決算・申告を終えた過去の年度の間違いは、会社の帳簿を直すだけでなく税額に影響することがあり、直し方が変わります(この点はのちほど触れます)。まずは「今期のうちの間違いか、締めたあとの間違いか」だけ、はっきりさせておきましょう。
3. 正しい仕訳の形を決める
打ち消す前に、「本当はどう入れるべきだったか」を先に決めておきます。ここが曖昧なまま逆仕訳だけ入れると、正しい仕訳を入れ忘れて残高が狂います。「消す仕訳」と「入れ直す仕訳」はワンセット、と覚えておくと安心です。科目の選び方そのものに迷うときは、勘定科目の選び方|迷ったときの判断軸と科目一覧もあわせて見てみてください。
直し方その1:反対仕訳(逆仕訳)で消して、入れ直す
いちばん基本で、どんな間違いにも使えるのがこの方法です。間違えた仕訳の借方・貸方をそっくり入れ替えた仕訳を入れて打ち消し(=反対仕訳/逆仕訳)、そのうえで正しい仕訳を入れ直します。 赤伝の考え方そのものです。
例1:消耗品費で入れるべきものを、間違えて「事務用品費」5,000円で計上していた(現金払い)
まず、間違えた仕訳をそっくり逆にして打ち消します。
(借方)現金 5,000 / (貸方)事務用品費 5,000
摘要:○/○ 事務用品費の計上を訂正(誤計上の取消)
次に、正しい仕訳を入れ直します。
(借方)消耗品費 5,000 / (貸方)現金 5,000
摘要:○/○ 消耗品購入 正しい科目で再計上
これで、間違えた事務用品費は差し引きゼロになり、正しい消耗品費が残ります。「消した跡」と「正しい姿」の両方が帳簿に残るのがポイントです。
例2:借方と貸方を逆に入れてしまった(売掛金と買掛金を取り違え、など)
貸借が逆のときも、考え方は同じです。まず入れてしまった仕訳の反対仕訳で丸ごと打ち消し、正しい向きで入れ直します。逆仕訳を1本入れるだけで直そうとすると混乱しやすいので、「取り消し1本+正しいの1本」の2本立てにすると、あとで見返したときに分かりやすくなります。
直し方その2:金額の間違いだけなら「差額」で直すことも
科目も貸借も合っていて、金額だけを打ち間違えたときは、差額分だけを足し引きする方法もあります。仕訳の本数が減るので、少額の打ち間違いのときに便利です。
例3:消耗品費を正しくは5,000円のところ、3,000円で計上していた(2,000円不足/現金払い)
不足している2,000円だけを追加計上します。
(借方)消耗品費 2,000 / (貸方)現金 2,000
摘要:○/○ 消耗品費 計上額の不足分を追加訂正(3,000→5,000)
例4:逆に、5,000円のところ7,000円で計上していた(2,000円の過大)
多すぎた2,000円を、反対仕訳で戻します。
(借方)現金 2,000 / (貸方)消耗品費 2,000
摘要:○/○ 消耗品費 計上額の過大分を訂正(7,000→5,000)
差額で直すときも、摘要に「元はいくらで、正しくはいくらか」を書いておくと、後から見た人がすぐ経緯をたどれます。迷ったら、無理に差額でひねらず、その1の「打ち消して入れ直す」で直しても、もちろん問題ありません。
早見表:間違いのパターン別・直し方
言葉だけだと混ざりやすいので、表で並べてみます。
| 間違いのパターン | 基本の直し方 | ポイント |
|---|---|---|
| 科目を取り違えた | 反対仕訳で打ち消し+正しい科目で入れ直し | 摘要に「誤:旧科目/正:新科目」を残す |
| 借方・貸方が逆 | 反対仕訳で丸ごと打ち消し+正しい向きで入れ直し | 逆仕訳1本で直そうとせず2本立てに |
| 金額が少なかった | 不足分だけ追加計上 | 「元→正しい金額」を摘要に |
| 金額が多かった | 過大分を反対仕訳で戻す | 「元→正しい金額」を摘要に |
| 同じ取引を二重計上 | ダブった1件分を反対仕訳で打ち消し | どちらを残すか決めてから消す |
こうして並べると、やることは一貫しています。元を黙って書き換えず、逆の仕訳で打ち消し、正しい姿にして、直した経緯を摘要に残す。 これだけです。
ここは気をつけたい:やってはいけない直し方
直すときに、避けたい進め方が2つあります。責めるためではなく、あとで自分が困らないための注意点として、そっと押さえておきましょう。
1つめは、元データを黙って上書きすること。 会計ソフトは元の仕訳をそのまま修正できることも多いですが、電子帳簿の考え方では「いつ・何を・どう直したか」の記録(訂正・削除の履歴)を残せるようにしておくのが基本です。とくに電子取引のデータや、履歴が残る運用にしている場合は、こっそり書き換えるより、訂正仕訳として跡を残すほうが安心です。この考え方は、電子帳簿保存法「電子取引」のデータ保存の基本対応ともつながっています。
2つめは、決算・申告を終えた過去年度の間違いを、その場の判断だけで直してしまうこと。 締めたあとの間違いは、会社の帳簿だけでなく、法人税や消費税の申告額に影響することがあります。金額が大きい場合や税額が変わりそうな場合は、当期の帳簿でどう受け止めるか(前期損益修正など)や、修正申告・更正の請求が必要かどうかを、顧問税理士に確認してから動くのが安全です。ひとりで抱え込まず、「これは相談する間違いだ」と線を引けること自体が、経理の大事なスキルです。
訂正仕訳チェックリスト
入力済みの仕訳の間違いに気づいて手が止まったら、上から順に確認してみてください。
- 間違えた仕訳の日付・伝票番号・金額・科目をメモしたか
- 4パターン(科目違い・貸借逆・金額違い・二重計上)のどれかを見分けたか
- その仕訳が「今期のうち」か「締めたあとの過去年度」かを確認したか
- 元データを黙って上書きせず、訂正仕訳で直す方針にしたか
- 「打ち消す仕訳」と「正しい仕訳」をワンセットで用意したか
- 摘要に「いつ・どの仕訳を・なぜ直したか(誤/正)」を残したか
- 直したあと、その科目の残高が正しくなったか見直したか
- 税額に影響しそうな過去年度の間違いは、税理士に相談する印をつけたか
明日やること(まず1つだけ)
全部を一度に整えようとすると、それだけで気が重くなります。 明日やることは、「直近1か月の仕訳を軽く見返して、気になる一行を1つだけ、正しい手順(打ち消し+入れ直し)で直してみる」だけで十分です。
もし直し方に迷ったら、無理に一発で消そうとせず、まず「元の仕訳をそっくり逆にした仕訳」を思い浮かべてみる。それが打ち消しの形です。そこに正しい仕訳を足せば、もう直せています。一度この2本立ての流れを手で体験しておくと、次にミスを見つけたときも、固まらずに動けます。
最後に
入力済みの一行の間違いに気づいて、伝票をめくり直し、逆の仕訳を組み立て、正しい姿に整える。地味で、少し胃がきゅっとして、でも会社の帳簿の正しさを守るための、大切な作業です。その間違いと静かに向き合って直しているだけで、もう十分ていねいな仕事をしています。

でも、これは「一度も間違えてはいけない試験」ではありません。間違いは誰でも混ざります。大事なのは、気づいたときに、跡を残しながらきちんと直せること。打ち消して、入れ直して、経緯を残す。その流れが身につけば、次にミスを見つけても、もう慌てずに手が動きます。 今日、直し方の地図がひとつ頭に入ったなら、それはもう「怖い作業」が「進められる作業」に変わり始めた証拠です。完璧でなくて大丈夫。今日できたところまでで、十分前に進んでいます。
本記事は一般的な実務情報です。訂正仕訳の入れ方や、過去年度・決算後の誤りの直し方、税額への影響は、会社ごとの会計方針や個別の事情によって異なります。税務上の取扱いを含む最終的な判断は、顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。
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